ひぐらしのなく頃に解 目明し編

やっと時間ができたので、片道の交通費に本体の値段以上かけて、これだけのために買いに行ってきた。
ある意味想像以上で、同時にある意味拍子抜けした。想像以上という意味は、純粋な解答編を想像していたのにちゃんとした物語があったこと。一方で、連続殺人事件の真相という点では結局それほどの情報がなかったのも事実で、それが拍子抜けした理由。
(以下ネタバレ)

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ポストガール / 増子二郎 ISBN:4840221154

ポストガール (電撃文庫)
印象を一言で言うと、ヨコハマ買い出し紀行GUNSLINGER GIRL鉄腕アトム?みたいな。
主人公の人型自律機械<メルクリウス>シルキーは、性能や境遇なんかはヨコハマ買い出し紀行のアルファやココネと大差ないけど、自意識と行動プログラムの乖離に悩んでいて、自らを「バグを持つ」と形容したりするところが決定的に違う。背後に横たわる巨大組織の存在も事態を一層深刻なものにしている。そんな中で、語られる物語はあくまで優しい。短編らしくどのお話も終わり方はとても綺麗で、読後感は最高。一方で世界観の方は結構シビアだったりする。たとえば人型自律機械<メルクリウス>が抱き人形<イシュタル>をベースに作られたということが一話で既に示されていたり。そこにあるのは必然で、ぬるい幻想なんてない。
自分が好きなのはこういう精巧な世界と優しい物語の組み合わせなんだ。世界は必然性(法則、ルールと言い換えてもいい)を持つから美しい。ときにそれが残酷な結果を生むとしても。物語が美しいのはそんな世界でも人々が優しさを失わないから。それが困難だから、逆にそれを見つけたときの喜びも大きい。たぶんこれが、自分にとってロボットや幽霊や天使や宇宙人が出てくる物語が好きな理由なんだろう。そうした(人と人でないもののような)境界に存在するもの*1と、人との間に生まれる信頼や情愛こそが、求めて止まないものだから。
とはいえ、この作品はそこまで重い話ではなくて、単なるキャラ萌えだけでも十分読めると思う。あと唇を重ねる場面とか部分的に描写が妙に艶めかしかったりするので、そういうのを期待する向きも多少は興味を満たされるかと。

*1:専門用語でいうところのマージナルマン