読書感想

「あなたが好きなの」キター! 祐巳じゃなくてもここは萌え転がるところでしょう。しかし、なぜそれほど祐巳のことを必要としているのか? 祥子様側の理由が直接的に描かれていないのでやや唐突な感も否めない。「小笠原の家系は、たぶん潜在的に福沢姉弟みたいなタイプに弱いんだ」とか言われても。

前作で味をしめたのか、今回も同じ時間軸を視点を変えて三回繰り返してる。けど、これはあまりいい傾向じゃないなあ。キャラクターがどうしてその時そういう行動をしたのか、全部読まないと分からないから最初読んでいて軽く混乱した。伏線が後から出てきた感じ。それに、すれ違いを演出するのに片方の視点だけ描くのはフェアじゃないと思う。

この辺で福沢祐巳というキャラクターの魅力がどこにあるのか(少なくとも作者はどう思っているか)は何となく分かってきた。色んな人が、「この人には嫌われたくない」と思ってしまう。これは「誰からも好かれる」というのと同じようでいてかなり違うんじゃないだろうか。その違いはうまく説明できないけど。自分は批評家ではないので、作中で回答があるまでこの気持ちは保留しておくことにする。

マリア様がみてる』のどこが好きかと考えてみると、一つには、誰も悪人が出てこないというところだ。傘を無断で持っていった盗っ人Aに対しても「深い事情があったのでは」「本当は良い人なのでは」と思わせるフォローが入っていたりする。そういえば『カードキャプターさくら』も同じような理由で好きだったなあ。「ごきげんよう、お姉さま」「素敵ですわ、さくらちゃん」ううむ。俺ってばこういう作品に弱いのかもしれん。

そうそう、よく「マリみては設定が特殊でついていけない」とかいう意見を見るけど、こんなのハードSFとかハイファンタジーに比べたらどうってことないよ。もともと作者はそっち系の人なんだし。