読んだ本の感想

楽園 (新潮文庫)

楽園 (新潮文庫)

太古のモンゴル砂漠で引き裂かれた男女の子孫が民族移動の末に現代のアリゾナの地底湖で巡り会うという、時間的にも空間的にも壮大なラブロマンス。文体は極めて男性的で、その力強さには読んでいて安心する。特に、極限状況に陥ったときに登場人物達の見せる圧倒的な生命力がすごい。ただ途中で主人公が代わっていくので、ひたすら愛する人を取り戻すことだけを目的に行動していた最初の頃と比べて、途中から生き延びること自体が最大の目的みたいになってしまったのがちょっと残念。

puzzle (祥伝社文庫)

puzzle (祥伝社文庫)

この人の場合、謎解きの途中までは面白いんだけどなあ。

虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド)

虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド)

この中では一番面白かった。
正統派の児童文学でありながら、意外に根の深いテーマを扱っていて、読んでいて何度も考えさせられた。大人たちは賢いが故に囚人のジレンマに陥り、正しい心を持った子供たちがそれぞれの能力や立場で精一杯頑張った結果、思いもよらない幸せな結末を迎える。その中で大人と子供の中間にいる主人公は、自分の行動に迷い悩みながら成長していく。その様子がたまらなく愛しい。
シリーズ続編の「蒼路の旅人」は今月出るらしい。これも楽しみ。

ドグマ・マ=グロ (新潮文庫)

ドグマ・マ=グロ (新潮文庫)

スプラッタでスラップスティック。それでも下品に感じないところはさすが。元ネタの小説は知らないが、エイリアンとホームアローンを足して2で割ったみたいな印象を受けた。

これまでの伏線を軒並み回収した感があるな。「横暴ですわ、お姉様の意地悪」は1巻P37で祥子が言ったセリフそのまま。「双子の片っぽが火星に」は体育祭の前の話(「レディ、GO!」P37)。写真立ての描写は「チャオ ソレッラ!」P158にちょこっとだけある。そして内藤笙子の初登場は「ショコラとポートレート」(「バラエティギフト」収録。最初間違えて「ウァレンティーヌスの贈り物」まで読み返してしまった)。
今回はとりあえず祐巳の妹選びは保留して由乃に妹候補ができたわけだけど、これがまた意外と相性の良さそうな組み合わせで妙に納得。祐巳にしても可南子が戦線離脱して本命は一本に絞られたので、次巻ではその話がメインになるんだろうな。それ以外にも意外な人に妹候補ができたり姉妹になったり、ここにきてようやく話が動き始めた感じ。
最初の方の章では視点が祐巳由乃の間で頻繁に移るからちょっと混乱したところもあったけど、章の間では一貫していて途中で視点がブレているわけではないから、別に読みにくいとは思わなかったな。もしかして意図的に奇数章は祐巳視点、偶数章は由乃視点、と決めてやろうとしているなら、その試みは面白いかもしれない。