読んだ本

インサイド・ワールド (電撃文庫)

全般的にネガティブなんだけど読後感は悪くない。何とも捉え所のない不思議な作品だった。淡々とした描写が続くと思ったらいきなり登場人物が衝動的な行動を始めてみたり、それなのにラストシーンは妙に爽やかだったり。まるで思春期で情緒不安定な女の子みたいだ。出てくる女の子もそんな感じで、どいつもこいつも男にとって都合がいいだけのキャラでは全然ないのは良かった。この作者は十中八九女性だな。
好きなキャラは表紙にも描かれている春名希優(まひろ)。こういうコミュニケーション不全系の人はかなり好みだ。どんな人かというと、

「……これ、コーヒーじゃないですか。私、コーヒーは嫌いです。すごく嫌いです。どうして私の嫌いな飲み物を買ってきますか、あなたは」
 そんなこと僕が知るわけないだろ。
「私は紅茶派なのです」
 それも僕の知るところではない。
「紅茶が飲みたいです」
 そんなこと言われても困る。すごく困る。
「紅茶を買ってきてください」
 願望が命令に変わった。なぜだ?
「……あのさあ……自分で買ってこいよ、それぐらいのこと」
「そうですね、ロイヤルミルクティーがいいですね。是非に飲みたいです」
「だ、だから、僕は買ってくるとは一言も――」
「いってらっしゃい」
(第1話 エスケープ×エスケープ より)

こんな感じ。この見事なマイペースぶりには惚れる。現実にいたら厄介だろうけど。どうでもいいけど優しさが(まれ)ってのはあんまりな名前だ。