読んだ本

未来(あした)のおもいで (光文社文庫)光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)

『未来のおもいで』は、作者お得意のタイムスリップ・ロマンス。これは…ネタばれになっちゃうけど開始40ページで分かることだから書いちゃえ。ええと、これは『たんぽぽ娘』の逆パターンだな。この本をSFとして読もうとすると、SF的な謎が早々に片付いてしまって(しかも未解決の謎は最後まで謎のままで)拍子抜けするかもしれないけど、その分逆にプラトニックなラブストーリーとしての純度は高いから、一般の人が読んでも十分面白いと思う。

『光の帝国―常野物語』は異能の一族常野の人々を巡る連作短編集。それぞれのお話はバラエティに富んでいて、しかも恐ろしいことに、この後いくらでも続編が書けそうなものばかり(必ずしも良い意味だけではなくて、逆に言えば終わり方がひどく中途半端なものも)。この中では『オセロ・ゲーム』が単体として一番面白かったかな。抽象的な能力を極めて映像的に表現するやり方は、なんとなくジョジョのスタンドっぽい。膨大な記憶を頭の中に「しまう」ことのできる家族のお話『大きな引き出し』は恩田陸エマノンという感じで、一番続きが読んでみたい。