読んだ本

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

これは筋金入りの本好きのための本だ。それ以外の人にはちっとも面白くないだろう。そういう自分も、感覚的にわかる部分もあれば付いていけないと感じることもあった。クラクラと眩暈のするような奇妙な4編の中で、ある意味最も面白かったのは4章の「回転木馬」。この超変化球で一歩間違うと大暴投すれすれの危うさがたまらない。

我々は合理的な解決や、あっと驚くトリックを待っているわけじゃない。そりゃ、そういったものがあるにこしたことはないけどね。でも、それより大事なのは、わくわくするような謎が横たわり、それに呼応する大きな答を予感させる物語が現れることなんです。
-- 第1章 「待っている人々」より

これを読んで、これまでの疑問が氷解した。なぜ恩田陸の作品はいつも終わり方がああも中途半端なものが多いんだろう? にもかかわらず、これほど面白いのは何故だろう? 普通のミステリ(あるいはミステリに限らず多くの物語)は、どこから始まっても必ずどこかへと向かう。言い換えれば結末に向かって収束する。それに対して恩田陸の描く物語は、ここからどこかへ。始まりがあり、方向を持ってはいるが、たどり着くべき結末を持たない。それは彼女の、いつまでも続く物語を読みたいという願望が反映されているんだろう。それが最大に発揮されたのが本作だ。さらに言えばその永遠性は過去にも向かう。記憶は直線ではなく、ねじれて螺旋を描きどこかで循環する。そこが他の作家とは大きく異なる。以前恩田陸のキーワードは記憶だと書いたが、本作を読んでいる最中に、「ループする記憶の魔術師」という言葉がふと頭に浮かんだ。

マリア様がみてる 19 イン ライブラリ (コバルト文庫)

所要時間およそ30分余りで読了。読み始めてから、雑誌に掲載された分は全部読んでいたことに気が付いた。つまりそれだけ雑誌を買っていたということだ。しかしこんなやっつけ仕事みたいなこといつまでも続けてないで、早くちゃんとした続きを書いて欲しいな。