読んだ本

黒と茶の幻想 (Mephisto club)

青に捧げる悪夢(ISBN:4048735934)の最初(「水晶の夜、翡翠の朝」)だけ読んだところでやっぱり憂理が好きなことを再認識して、その後の憂理の話が気になったので読み始めた。そうしたら、これ自体とても面白くて、600ページ以上あったけど一気に読んでしまった。「過去の秘密を探る旅」「美しい謎」と実に恩田さんらしい作品で、帯の「恩田陸の全てがつまった最高長編」というコピーもあながち間違いじゃない。
それにしてもこの作者は人間の表と裏を実によく観察している。登場人物の四人が四人とも、他人から見たときと本人の内面に多かれ少なかれギャップがあって、内面が描かれる度にそれまで抱いていたイメージが壊れるんだけど、それによってより多面的な魅力が生まれる。読んでいるうちに、こんな親友がいたらいいなと素直に思えてくる。というか、この四人がセットだからいいんだろうな。
それはそれとして、あの人でなしがなんであんなにもてるのか不思議だ。憂理ファンとして個人的に許せないなあ。三月の学園を出た後の憂理の話が読めたのは良かったけど、彼女には幸せになって欲しかったので、あの最期はちょっと。でも密かに彼女はまだ生きてるんじゃないかと期待している。誰も死そのものを確認したわけではないんだし。役者なんだから、死にそうに見えたのだって全部演技かもしれない。
四人の中で一番好きなのは彰彦。金持ちで美しい容姿で露悪的に振る舞っているけど実は繊細でとても純情。自分もこういう人になりたい、と思った。なれないけど。