癒しの先にあるもの (リアライズ感想)

以前Leafの新作*1が発表されたときに、高橋&水無月コンビで当時大流行していた癒しのその先にあるゲームを作ってほしいと期待した。その結果は散々なものだったが*2、それから数年を経てついにリアライズが発売された。

癒しというのは要するに不特定多数に対する無条件の肯定だ。安易な癒しが蔓延する中で、それは違うと感じる人が増えるだろうと思った。しかし実際は、「癒し系」なんていう生温い言葉も今では日常に溶け込んでしまったし、「萌え」がますます先鋭化してそれだけに特化したものが氾濫するようになった。

以前、高橋氏はどこかのインタビューで「時計の針」の話をしていた*3。12時を指している時計の針を180度回してしまったらだれも見向きもしない。かといって12時のままでは何の発展もない。クリエイターの仕事は、12時5分を指す作品を生み出すことだと、そんな内容だったと記憶している。

そういう意味では、このリアライズという作品は、少し早すぎたと思う。時代の先を行き過ぎて、おそらく高い評価を得ることもないだろう。でも、それでも今この時代にこの作品が存在することには意味があると思う。複雑化する社会の中で誰もが絶対的な価値観を見失った今、本当の幸福とは何なのか。癒しの先にあるものを、この作品は確かに見せてくれたような気がする。

*1:LVN4だと思ったが、時代が合わないので誰彼だったかも

*2:誰彼100円とか、超先生RRとか、Leaf大阪の相次ぐ主要スタッフの脱退とか

*3:確かTo Heartのビジュアルファンブックか何かだったと思う