沙耶の唄

(ネタばれ注意)

前から気になっていたのでリアライズと一緒に購入したもの。もともとTYPE-MOON奈須きのこ虚淵玄と何度か対談していたことからNitro+には関心があったのだが、このゲームが気になったきっかけは例の「声明文」だった。Nitro+といえばこれまで鬼哭街とかヴェドゴニアとか、熱い漢のエロゲ作ってるメーカーという認識だったから、そういうのを作ってた連中が今回、沙耶という少女を前面に出して一体どういう作品を作るのか興味があった。もちろん普通の萌えゲーになるなんてことは全然期待してなかったけど。それでやってみたらこれが大当たりで、自分の大好きな系統だった。いや、グロいのがじゃなくて、SFホラーで人外との純愛ものというあたりが。

事故による脳障害で他の人間が化け物にしか見えなくなった主人公の前に現れた、唯一まともな人間に見える少女『沙耶』。この時点で沙耶の本当の姿は予想がついたので、その後沙耶の可愛さが強調されればされるほど本当の姿とのギャップが大きくなって、これは美少女ゲームのフォーマットに則っていながら実はそれに対するアンチテーゼなんじゃないかとさえ思った。「結局は見た目が大事ってことか?」と。容姿が異なるだけで、人はこれほど反応が違ってしまうのか。その豹変ぶりも恐ろしかった。そして、「種族を超えた恋愛は悲劇しか生まないのか?」と悲しくなった。誰が悪いわけでもない、ただそれぞれが幸せになりたかっただけなのに、結果としてどんなエンディングを迎えても誰も幸せになれない。なんて切ないんだろう。

考えれば疑問に思うことが沢山ある。例えば、

  1. 主人公は他人が化け物に見えるけど自分の姿はどう見えているのか。
  2. 沙耶は自分自身の身体をいじることはできないのか。
  3. 主人公の脳障害の原因となった手術に奥涯教授は関わっていたのか。
  4. 地球上のすべての人間の身体と脳を同時にいじったらどうなっていたのか。

4は、誰もそれを知覚できないとすれば、これは一番幸せで、同時に一番残酷な終わり方だと思う。果たしてそれはハッピーエンドと呼べるのか。